引用:photoAC
海水浴に磯遊び、ダイビングやシュノーケリング、と海には楽しい遊びがいっぱい!
水の中をちょっとのぞけば、見ているだけで癒されたり楽しませてくれる魚や動物がたくさんいますよね。
しかしその一方で、当たり前ですが自然環境にはさまざまな危険も潜んでいます。
その中のひとつが「危険な生物」。
毒を持っていたり、攻撃性があったりといった生き物が海の中にはいろいろいるのです。
島旅に出かけたら、できるだけ安全に遊び、いい思い出だけで帰ってきたいですよね。
そこで、誰もが海遊びで出会う可能性の高い「危険な生物」について、もし被害にあってしまった場合の対処法も含めご紹介いたします。
砂浜に潜む危険な生き物
海に入らなければ危険なものには遭遇しないと思われがちですが、油断はできません。
砂浜でも、下手をすると死に至る危険が潜んでいるので注意が必要です。
一体どんな危険なのか、詳しく見ていきましょう。
カツオノエボシ
海水浴に行ったときに「カツオノエボシ」という名前を耳にしたことはないでしょうか。
生息地は広く、サーフィンや海水浴で人気の湘南の海でも見かけます。
これはクラゲに似ているが実はクラゲではなく、ヒドロムシ(体の表面にたくさんの毒針をもつ刺胞動物)が複数集まってつくる群体です。
「電気クラゲ」などという異名があるくらい、刺されるとアナフィラキシーショックを引き起こすこともあるという大変な猛毒を持っています。
これは命の危険を伴うたいへん危険な生き物です。
カツオノエボシはコイル状になっている触手を持ち、小魚などの獲物に触れるとその触手を伸ばし毒を出すことで動けなくして捕食します。
長さはなんと50mにもなると言われているのには驚きですね。
綺麗で鮮やかな青色をしていて、浜辺に打ち上げられたカツオノエボシはビニール袋や水色のペットボトルと見間違えられることもよくあります。
以前、8月下旬に湘南でビーチコーミングをしている時でした。
浜辺に落ちていた透き通った青いものがあり「なんだろう?」とまじまじと眺めていたら、地元の方が「カツオノエボシだから触ってはダメだよ!」と教えてくれ、初めて存在を知りました。
その綺麗さからか、または珍しさからか、つい手で触れたり拾ったりしてしまいがちですが決してさわってはいけません!
たとえ死骸であっても、毒は残ったままになっているのです。
引用:photoAC
もちろん、生きているカツオノエボシは浜辺ではなく水中を漂っています。
水の中で、風船のようにフワフワ、プカプカ浮かぶ綺麗なものを見つけたときはすぐに避けましょう。
水中で出会う可能性が高い危険な生き物
水の中には、綺麗なお魚もたくさんいます。
サンゴ礁の海では、テーブル珊瑚や枝珊瑚の森も観られる場所もあるでしょう。
しかし、綺麗でかわいいものばかりではありません。
どんな危険な生き物がいるのでしょうか。
アンドンクラゲ
海を泳いでいるとさまざまなクラゲを見かけることがあります。
その中でも刺される被害の多くは「アンドンクラゲ」という透明なクラゲです。
行灯のような箱型の形状で、四隅から長い触手が伸びています。
傘の大きさは5cmほどと小さめですが、触手がとても長く長いものでは60cmにもなります。
この触手と傘の表面に毒針がついていて、触手は水中で見えにくいこともあり、気づいたら刺されていたということになるわけです。
引用:Wikipedia
長い触手は足や腕などに螺旋状に絡みつき、ピリピリという刺激のある痛みを伴い、ミミズ腫れになることが多いです。
ただ死に至るほどの毒はないので、そっと触手を剥がし、海水でよく洗えば次第に痛みや腫れは引いていくことがほとんどです。
ドルフィンスイムをしている時などに知らない間に刺されていて、船に上がってからピリリと皮膚が痛いことで気づいた・・・なんてことも。
私はまさにそれでした。
それまでクラゲに刺されたことがなかったので正体が何かわからなかったのですが、人に話したら触手を取って洗い流すことを教えてくれました。
”ペリペリ”と音がするようにきれいに螺旋状に巻きついていた触手がはがれ、心底びっくりしたのを覚えています。
命に関わることはないですが、症状がひどい場合は病院でみてもらうと安心です。
ガンガゼ
「ガゼ」という名前からピンと来た方もいるのではないでしょうか。
地域によりますが、「ガゼ」は「ウニ」を表します。
その仲間、ガンガゼはウニよりも細く長い猛毒の棘(トゲ)を持っていて、長さはだいたい20〜30cmほどあります。
引用:Wikipedia
見るからに毒々しい、凶暴そうなフォルムなので、見た瞬間すぐに判別できると思います。
この棘がささってしまうと猛烈な痛みを伴います。
食用として有名なムラサキウニやバフンウニなどは少々手を押し付けたくらいでは皮膚にささることはありません。
しかし、ガンガゼの棘は非常に鋭く、少し触れた程度でもダイバーのウエットスーツを軽く貫き体にささると言われています。
そして厄介なことに、棘はもろく折れやすいうえに逆棘もあるので、体に入ってしまうと抜くのが大変なのです。
房総半島や伊豆半島といった関東近郊の海でもよく見られる危険生物です。
おもに大きな石の陰に隠れるようにしていることが多いので、砂地の海水浴では見かけることはあまりありません。
シュノーケリング中、ダイビング中は石や岩をつかみたくなる時があると思いますが、ガンガゼがいないかどうかをよく確認したほうがよいでしょう。
私は、ダイビングを始めたばかりの頃はゴロタ(石ころ)の海岸や岩場から歩いてエントリー/エグジットすることが多く、入水した直後などに手をつこうとしたら3〜5匹くらい固まったガンガゼが居てヒヤッとしたことが何度かありました。
ささってしまうと、そのあとは海遊びどころではありません。
ガンガゼは十分に気をつける必要がある生き物です。
エイ
海の中の砂地で上手にかくれんぼをしている危険生物もいます。
そのひとつがエイの仲間「アカエイ」です。
引用:Wikipedia
エイなんて水族館で見るだけの珍しいものと思われがちですが、意外と身近に生息しています。
浅瀬の砂地によく現れるため、潮干狩りや釣りで気軽に海に入ってしまうと、知らずに踏んづけてしまうなんてこともあるようです。
エイといえば、ひらたい体と長い尻尾が特徴的ですよね。
その尻尾には数cmから数10cmにもなる毒針があり、猛毒を蓄えているのです。
さら尾の先には「かえし」がついており、引っ張って抜こうにも、その「かえし」がひっかかってしまいます。
万一、その尾に刺されてしまうと、ハンマーで殴られたかのような激痛が走り、そのあとを追うように今度は刺すような痛みに襲われます。
けいれん、嘔吐、発熱、重症なものでは筋肉が麻痺するなどの症状をもたらします。
場合によってはアナフィラキシーショックを起こし死に至らしめることもあるため、注意が必要です。
ヒョウモンダコ
ヒョウモンダコは、大きさは10cm程度の小ぶりなタコです。
引用:Wikipedia
青い輪っかの模様が体の表面にあり綺麗に見えるため、つい手を出してしまいがち。
その模様が出ている時こそが危険な時です!
実は、普段は褐色の色をしていますが、興奮すると模様が現れるのがヒョウモンダコの特徴なのです。
噛みつかれると、フグと同じ「テトロドトキシン」という神経性の猛毒におかされ、嘔吐やけいれん、神経麻痺、呼吸困難、言語障害に陥ることも。
その毒性は青酸カリの500〜1,000倍とも言われています。
噛まれてから数分で症状が出始め、早ければ15分ほどで呼吸困難を引き起こし、症状が重い場合は90分で死に至るケースもあります。
まだ日本国内では死亡例はありませんが海外では亡くなった人もいるので、細心の注意をはらうべき危険生物です。
また、筋肉や表皮からも毒性が検出されたという報告もあるため、噛まれるだけでなく食べた場合にも死亡する可能性があります。
食べてみたいと思っても絶対に口にしないようにしましょう。
サンゴの陰や岩の切れ目などに潜んでいることもあるので、特に磯遊びやダイビング、シュノーケリングなどではより一層注意したい生物です。
ウツボ
ウツボはご存知の方も多いことでしょう。
最近は食用としても話題になっていますが、「海のギャング」などと呼ばれ水族館でもよく見かける魚の一種です。
一見ひょうきんな顔にも見えるのですが、じっくり見てみると大きな口に尖った歯、とても凶暴そうな顔つきをしているのがよくわかります。
大抵、岩やサンゴの隙間などに身を潜めているのですが、うなぎや蛇のようにニョロニョロと出てきては水中を泳いだりします。
引用:photoAC
房総半島あたりから九州までの太平洋、そして島根から九州までの日本海側と広い範囲で生息しており、世界中で見ると200種くらい存在すると言われています。
ウツボにも毒をもつ種もありますが、何よりの危険は気性の荒さです。
縄張り意識が強く、侵入してくるものに対しては人間のように自分より大きな相手でも威嚇し噛み付いてきます。
非常に噛む力が強く、また歯がとても鋭利なので、ちょっとでも噛まれたら大怪我になってしまいます。
姿を見かけたら静かにそっとその場から離れた方が賢明です。
口を開けて威嚇してくるのを見ると、ダイビング中など思わずちょっかいを出したくなってしまうかもしれませんが、魚とはいえ大変凶暴ですので不用意に近寄ったり手を出したりしないことをおすすめします。
カサゴ
オニカサゴにミノカサゴ・・・こちらも水族館に必ずと言っていいほど展示されていますね。
オニカサゴはメバルのような見た目で少しゴツゴツした印象です。
体中あちこちに毒針があり、他のカサゴと比べても猛毒な毒を含んでいます。
一方、ミノカサゴはまるで羽のようなヒレを優雅にひらひらとさせながら泳いでいる綺麗な魚です。
引用:photoAC
しかし、そのヒレに騙されてはいけません。
ここにも毒針があるのです。
刺されると猛烈な痛みに襲われます。
真っ赤に腫れたり、重篤なケースだと呼吸困難になることもあります。
動きがゆっくりでおとなしそうに見えても、実は攻撃的な一面も持ち合わせている魚です。
ダイビングやシュノーケリングで見かけても、あまり近づかずに早めに離れた方が良いでしょう。
綺麗なので写真を撮りたいと思ってしまいますが、執拗に追いかけたりすると反撃をくらい刺される危険がありますよ。
刺された!噛まれた!そんな時の対処はどうすればいい?
細心の注意をはらっていたにもかかわらず、刺されてしまった、噛まれてしまった、ということもあるかもしれません。
その時は、どのように対処したら良いのでしょうか。
クラゲに刺された時の応急処置
クラゲに刺されると、その箇所に触手が残っていることがあります。
触手がある限り、新たに刺さってしまう可能性があるためピンセットがあればまずは取り除きます。
この時、素手でつかむことは避けましょう。
つかんだ手まで刺される危険があるため、もしピンセットがない場合は無理に取ろうとせずそのままにします。
次に海水でやさしく洗い流しましょう。
触手が残っている場合は、刺胞を刺激しないよう特に注意してそっと洗い流すようにします。
ゴシゴシ洗いはNGですよ。
また、真水も刺胞を刺激することがあるので、できるだけ海水で洗った方が安全です。
痛みを軽減するために、まずは40〜45度くらいのお湯で患部を温めます。
これは、たんぱく質からなるクラゲの毒を溶かすためです。
たんぱく質は熱に弱い性質があるため、どのクラゲでも大抵効果が期待できます。
そのあとは、刺された箇所が腫れて赤くなるので、冷水や保冷剤などを使用し冷やすと良いでしょう。
炎症を起こし腫れている時というのは、血行が良くなると痛みが増します。
冷やして血流を下げることで痛みは軽減されるのです。
”クラゲに刺されたらお酢が効く”という話を聞いたことがある人もいるでしょう。
これは、実はすべてのクラゲに効果的というわけではありません。
沖縄などに生息する「ハブクラゲ」にはたいへん有用なのですが、それ以外のクラゲではかえって逆効果に!
ハブクラゲだけは刺胞の働きが弱まり、毒針の発射を防ぐということがわかっています。
ところが、その他のクラゲの場合はむしろ刺胞を刺激し、毒針が発射されてしまうのです。
間違ってもカツオノエボシに刺されてもお酢をかけてはいけません!
基本は「海水であらう」ということを覚えておきましょう。
ハチと同様、クラゲでもアナフィラキシーショックが発生する可能性があるため、応急処置後はできれば早めに医療機関を受診することをおすすめします。
クラゲには、虫除けならぬ”クラゲ除け”があります。
人気があるのは「SAFE SEA」という商品です。
効果が高く、また日焼け止めと一緒になっているものとなっていないもの、キッズ用とバリエーションが豊富なのも人気の秘密でしょう。
刺されないことが一番なので、こういったものを活用して防御することもひとつですね。
また、長袖のラッシュガードやウェットスーツなども身を守るためには有効です。
毒針をもつ魚などに刺された時の応急処置
カサゴやオコゼ、エイなどの毒針に刺されてしまった場合、直後にズキズキとした激しい痛みにおそわれます。
これらの毒素も熱に弱く温度により分解されるため、40〜45度のお湯にしばらくつけて置くとよいでしょう。
カサゴについては、傷口の化膿さえ防げば時間とともに痛みは引いていくのでそれほど心配しなくても大丈夫です。
問題は「オニ」が頭に付く「オニカサゴ」「オニオコゼ」。
これらの毒は猛毒です。
ひどい場合は呼吸困難やけいれんを起こし命に関わることがあるので、早急な応急処置と専門の医療機関への受診は必須です。
<オニカサゴやオニオコゼに刺されたときの応急処置>
- ピンセットなどを使用し、とげを取り除く
- 傷口を洗浄する
- 40度までのお湯に30分以上つける
これらに刺された場合は時間との勝負になるので、素早く応急処置を施したらすぐに病院へ!
症状や状態によって幅広い対処ができるので総合病院などの大きなところへ行くのがおすすめです。
しかし、近くに無く時間がかかってしまうという場合はまずは近隣の医療機関にて受診するようにしましょう。
とにかくスピードが鍵となりますよ。
鋭い歯で噛み付かれた時の応急処置
引用:photoAC
ウツボ、ウミヘビ、クマノミ、サメと噛み付いてくる生物は身近にいろいろと存在します。
しかし、その多くは臆病で人間がちょっかいを出さない限りはあまり攻撃してくることはありません。
ただし、ヒョウモンダコに限っては話は別。
たいへん凶暴な性格であり、体表がオレンジになり青い模様が出ているときはいつ襲ってきてもおかしくない状況です。
すみやかに離れる必要がありますが、万一逃げる間もなく噛みつかれてしまったら、一刻も早く応急処置を施し病院を受診すべきです。
<ヒョウモンダコに噛まれたときの応急処置>
- 噛まれた部位から心臓に近い方を紐や布などで縛り、毒素が全身に回らないようにする
- よく洗い流しながら、傷口から毒を絞り出す(口で吸うと毒が体に入ってしまうので決して行わないこと)
- すぐに病院を受診する(重篤な場合は呼吸困難を起こしてしまうので救急車を呼ぶ)
それ以外の毒のないものに関しては、化膿しないよう傷口をよく洗い流し、冷やして痛みが引くのを待ちます。
あまりに傷が深い場合などは医療機関を受診したほうがよいでしょう。
どの生物にとっても、自分よりも体の大きい「人間」は脅威です。
むやみやたらに近づくことをしなければ、危害を加えることもありません。
海の中に入るときは、「おじゃまします」という謙虚な気持ちで遊ぶことが何よりも大切なことかもしれません。
安全に配慮し、楽しい海遊びになるといいですね。